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2008/05/07

無限の色彩と小さな革命。

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絨毯敷きの階段の6段目。向って左が一番広くて、背もたれもあって何より階段を往来する先生や生徒の邪魔にならないベストポジションなのだ。
リズム体操のリトミック教室とピアノのお稽古の総合教室に通っていた私は、当時・・・多分小学校1年生。

今では想像もつかない程、というか絶対に信じてはもらえないだろうが、とてつもなく大人しい子供だった。

着用するのは絶対スカート。鉄則だった。ズボンなんて、当時の私の美意識にとっては論外だった。
伸ばしっぱなしの髪は飾りのついたゴムで母に「痛い痛い」と文句を言いながら結ってもらうか、だらりと長く真っ直ぐに下ろしていた。
大変な人見知りで、団欒している教室の隅っこにある学級文庫の最寄の席に陣取って、済ました顔で絵本やらを読んだり、落書きノートに星のカービィのオリジナルストーリーを書き溜めては、こっそりと黙って勝手に学級文庫に加えていたりもした。
なんて陰気なやつだ。

多分ちょうどそのあたりの頃だと思う。よく思い出すことはないのだが、、、ぼんやりとした断片的な記憶が幾つもあって、破損の激しい映画の8ミリフィルムのようだ。
しかし、その映像は途切れ途切れにも確かな採光を放っているのだ。
何故、15年後の今でもそのフィルムを捨てられないのかはよくわからない。
ただ、あと15年後の先でもきっと捨てていないだろうというのは何故かよくわかる。

ぐるりと緩やかに2階へと続く階段に座って2階の本棚にある児童向けの本や洋書を読む。
生徒によって過ごし方はそれぞれ違ったが、私とその他数名の生徒はリズム体操の教室とピアノのお稽古の間の15分程度の休み時間をそうして過ごしていた。
そうじゃない子達は、ピアノ教室の準備に追われている先生の警備が薄くなった教室を、ここぞとばかりにドタバタと駆けずり回っている。
模範的な子もいて、リズム教室が終わるとさっさと2階のピアノの部屋に行って予習をしている。

私はそこまで真面目じゃなかったので、今日も本を広げていた。
先週読んだ洋書は気味が悪かった。7人の薄気味悪い悪魔が虹の沼で溺れてしまうという話。
仕方なかったのだ。本当は「ウォーリーを探せ」っていう本が読みたかったのに。

「ウォーリーを探せ」は生徒達の間で絶大な人気を誇っていて、リズム教室が済んでモタモタしているとすぐに誰かが読み始めてしまい順番待ちになるか一緒に読まなくてはいけない事になる。
順番なんて待っていても15分しかないんだから実際無理だし、あまよく知らない子と一緒に読むのもなんだか面倒くさい。
今日は運良くやかましい子の方が割合の多い教室だったので、大人しく本読み組の私は難なく「ウォーリーを探せ」をお抱えすることができた。

1階の教室の白いドアが勢い良く開いた。
赤い手提げカバンをブンブン振りながら、あゆみちゃんが飛び出してきた。
オカッパ頭(黒柳徹子ヘアー)で、天使の輪と言われる(らしい)、光が綺麗な髪の毛に反射して、頭のてっぺんあたりにくるりとできる輪が印象的な子だ。さらさらの黒髪を綺麗にオカッパ(徹子・・・。)形に整えてある。
しかしあゆみちゃんはそんな印象に反してとても活発、というか攻撃的な所がある子だった。
リズム教室の時にイタズラをして先生に叱られているのなんて日常茶飯事だし、むしろ先生が半ギレ状態であゆみちゃんの腕をひっぱって事務室に閉じ込めてお仕置きした時にもケラケラと笑っているような子だ。
真っ暗な事務室から聞こえるあゆみちゃんの甲高い笑い声は、かなり猟奇的に思えて私はちょっと怯えた事があった。
服装だってそうだ。あゆみちゃんは本当に可笑しな子で、女の子なのにいつも大きなダランとしたTシャツに黒いスパッツと、厳つい男の子みたいなスニーカーを履いていた。
たまに被っている帽子も野球のチームの変なマークのワッペンがついているキャップだし、まるで男の子みたいな格好なのだ。リズム教室が終わったら着替えるのかと思っていたけどそうではなく、どうも彼女の初期装備らしい。
だから、何で私とあゆみちゃんが仲良くなったのか、何で私があゆみちゃんに惹かたのか、また何であゆみちゃんが私の腕を掴んで引っ張り回したのか、正直わからない。
でも、とにかく私達は仲良くなった。
私が階段の隅っこで本を読んでいると、5分程度教室で暴れまわっていたあゆみちゃんがドタンと教室から出てくる。そして私の横に陣取って座り一緒に本を読むのだ。
読む・・・というか、あゆみちゃんが一緒になると読書どころではなかった。
あゆみちゃんは本の中の挿絵や文章を所々で拾っては瞬時にネタとしてこねくり回し(一体どの辺の脳みそを駆使しているのだろうか)ケラケラと笑いの対象にするのだ。多分彼女なりに読書ばかりしている私に合わせたのだろう。
しかし私は不思議と嫌ではなかった。
むしろ一人で読んでいる時よりも格段に面白かったし、一緒になって大声で笑った。
何度も繰り返して読んだ本も彼女と一緒だととにかく次々に笑えるネタが溢れてきて、飽きないのだ。

「ウォーリーを探せ」も例外じゃない。この本はページいっぱいに細かく描かれた何百人というたくさんの人の絵の中から赤と白のボーダーの服を着て眼鏡をかけているウォーリーという男を捜すというだけの本なのだが、人や色彩の数が半端じゃない為、子供が集中して探してもなかなか見つけられない。

私は勿論ウォーリーを探す訳だが、あゆみちゃんは違う。
あゆみちゃんは一度だってウォーリーを探さなかった。
彼女はウォーリーには一切興味を示さずに、ページいっぱいに蔓延る何百人の人々の中から格段に面白い人間や絵を探し出しては、コツコツと赤と白のボーダーだけに神経を尖らせている私に見せ、ケラケラと笑った。

「あゆみちゃん!いたいた、ウォーリー。これそうだよね!」
生徒達の間でも捜索難易度が高いとされているページでウォーリーを見つけた私は、少し興奮気味にページを指で押さえながら彼女に見せた。
あゆみちゃんは「ほんとだ~」と言ってニィーっと笑って見せただけで、またすぐに面白人間の捜索に戻ってしまった。

季節がゆっくりと転がっていって、私達もどんどん仲良くなった。
あゆみちゃんへの摩訶不思議な印象や少しだけあった恐怖感は既になくなって、むしろだんだんと私の中で彼女への憧れの気持ちが生まれてきていた。
本ばかり読んでいた私はいつしかリズム教室とピアノのお稽古の間の15分を彼女と一緒になって教室で転げまわって過ごすようになっていた。
わんぱくで活発な子、声の大きい子、色の黒い男の子、それまで全く縁がなく、むしろ避けていた彼らに対してあった私の中の漠然とした恐怖感はどんどん払拭されていった。
真新しいスリリングな感覚や落ち着きの無い予測不可能な展開の連続におっかなびっくりながらもドキドキして、毎回の様に転げ遊び続けた。あゆみちゃんはいつも私の腕をひいて、ケラケラと笑っていた。
白くてフワフワとしたお気に入りのスカート。
その裾にあった4つのレースのリボン飾りがいつのまにか全部とれて無くなっていた。
母に叱られた。手作りだったからだ。
私は言った。「スカートはもういいから、スパッツが履きたい」と。


あゆみちゃんとは教室だけではなく、2階にあるピアノの部屋でも遊んだ。
グランドピアノの足の間で人気を消して、教室に入ってくる先生を脅かしたり、
教室自体がない日にも近所の空き地や学校の校庭で遊ぶようになった。
あゆみちゃんは「ルールとか約束は破る為にある」とか思っているのだろうか。
何処にいっても、どんな遊具で遊んでいても、それらを正しい使い方、または示された通りの使い方で使用するにとどまることが無かった。
何かと浅知恵・悪知恵を働かせ新たな楽しみ方をクリエイトしていった。
それは時たま大人を怒らせる事だったり、あゆみちゃん自身が怪我をしたりするような危険なリスクも含んでいたけど。
少なくとも教室の隅で、絵を描いたり同じ本をじっと読んだりしているだけだった私にはひどくスリル満点で魅力的に思えた訳だ。
一緒に(というか半ば強引に道連れになった)子供にとっては少し落差のある塀から飛び降りたり、
階段の脇に二段続いた緩やかな車椅子用の坂をスケボーに乗って下り、車道に飛び出してしまい危うかった時もあった。
リズム教室の時に二人で教室から脱走して、酒屋さんでヨーグルトのお菓子を買い、戻る時に先生に捕まったり(勿論お仕置きだ。)
私にとってありえない日常が繰り広げられていった。
あゆみちゃんは物事が転回していく度に(どんな転回でもお構いなし)ケラケラと甲高い声で笑っていた。

梅雨に入った。湿気を充分に含んだ空気は蛍光灯の光にまで喰らいついている様で、それでなくても窓の
少ないリズム教室の部屋はなんとなく薄暗かった。
じりじりと上昇したり停滞したりを繰り返す湿度でその日はなんとなく息苦しくさえ思えた。
あゆみちゃんは相変わらず元気で威勢が良かった。窓に張り付いている雨粒が流れたり合体したりしていく様を見て、雨粒を擬人化し、台詞までつけてケラケラと笑っていた。
私もつられてケラケラと笑った。流れたり張り付いたり潰れたりする雨粒がとても可笑しく見えた。

そのうち先生が入ってきてリズム教室が始まった。
先生は女の先生で、クラモト先生という他のピアノの先生とくらべたらちょっとオバサンめな先生だ。
多分この教室で一番偉い人なんだろう。
肩までの黒い髪にいつも地味な色のカチューシャをつけている。
歌が上手くてピアノも上手だ。いつも引っ込み目の私もちゃんと皆の輪に入れるようにと気にかけてくれる、なかなか優しい先生だ。でも、
怒るとものすごく恐い。
あゆみちゃんもそうだが、他の生徒でちょっと悪ふざけがすぎるやんちゃな男の子や、リズム教室の邪魔をする子を叱って、最終的に真っ暗な事務室に放り込むのは他でもなくクラモト先生だけなのだ。
普段が優しく、問題ない為、キレた時クラモト先生はかなり恐い。

身体を動かすリズムの体操や絵本の続きの朗読が終わり、最後に音階のレッスンが始まった。
次に行くピアノのお稽古前に時間が余るとたまにやるレッスンで、要は音当てクイズ。
みんな後を向いて先生の手元が見えない状態になる。先生がランダムに鍵盤を抑える。その音がなんだかわかったら手をあげて答える。正解するとスタンプが貰えて全部溜まると五線譜のノートやら、消しゴムやら、音符のマークのついた鉛筆セットなんかがもらえたりするのだ。
私はあまり興味がなかった。だいたい貰える五線譜のノートは私が愛用していたうさぎのイラストがついている物ではなく、なんだか地味な緑色のやつでゴシック体のアルファベットで何やら表紙に書かれているだけのものだった。可愛くないし、線が細かくて音符が書き辛い。消しゴムは元々たくさん香りつきのや食べ物の形をしたのをもっていたし(当時流行っていた)鉛筆なんかより、ぶっちゃけロケット鉛筆やシャーペンが欲しかった。
小学校でそれらは使ってはいけない決まりだった為、母はなかなか買ってくれなかったのだ。

そうこうしている間に他の生徒達は一人、二人と正解を述べスタンプを貰っていく。
私も一応正解を述べスタンプを貰う。
早く終わればいいな。早く終わって早く転げまわって遊びたい。あゆみちゃんがまた可笑しい事を拾ってくるに違いない。あー、早く終われ。

とっとと時計の長針が30分を示す6の脳天を突き刺してはくれまいか。。
私は一向に向上心のない鈍間な時計の針ばかりちらちら気にしながら間の抜けた鍵盤の単音を聞いていた。

その時だ。
「はいっ!!」あゆみちゃんが手を挙げた。
「はい、イチカワさんどうぞ」クラモト先生がにっこりしながら答えた。

あゆみちゃんが元々大きめの口をさらに大きく横にニィーっと広げた。
「ファのシャープっ!」

「イチカワさんシャープを知っているの、すごいわね。でもちょっと違うわね。もう一度よく聴いてみて」
クラモト先生はやんわりとリベンジを促し、賞賛しながら、でも不正解だと伝えた。

小学校入ってすぐくらいになるのだから、シャープやフラットの知識は勿論あって良かった。
実際ピアノのレッスンもしている訳で、練習曲でも勿論必要不可欠なのだから。
しかし、リズムレッスンの時の音当てクイズでは、クラス全員のレベルの平均以下の問題しか出題しないようだった。すなわち、必然的に出題される音は黒鍵以外の極めて判りやすい音だけになるのだった。

クラモト先生は続けて次の音を弾く。
挙手する生徒達。ちら、とあゆみちゃんの方を見る。珍しく何か不満気な表情で俯いている。
小さくすぼまってしまった唇が聞こえないくらいの声を吐いているようだ。「アー」と言う発音を幾つか音を変えながら小さく何度も繰り返している。

「先生!さっきのもう一回やって!!」突然俯いていたあゆみちゃんが振り返り、叫んだ。真剣・・・というか、
どこか必死な表情だった。
クラモト先生も他の生徒達も驚いて一瞬全員が地蔵になった。休符が入った様に教室に一拍の空白が出来た。

「・・・・・。さっきのって、イチカワさん、さっき間違えた音の事?」
クラモト先生が空白に新たな流れを作った。生徒達は目を丸くしてあゆみちゃんと先生を交互に見ている。

「うん。さっきのはファのシャープだと思う。」あゆみちゃんは先生をじっと見つめながら答えた。

仕方なさそうにクラモト先生は黙ったまま鍵盤に視線を落とし、さっきの音を弾いた。
・・・・・。

「・・・どう?イチカワさん?」先生が問う。


あゆみちゃんは鍵盤を見ないように下を向いていた。そして俯いたまま言った。
「やっぱりファのシャープだと思う!」

クラモト先生は困惑した表情に「やれやれまた面倒な・・・」という感じの少し呆れた表情も浮かべながら
「イチカワさん、この音にはシャープもフラットもついてないのよ」となだめた。

「でも、前に弾いた時に、その音から弾いた時に、そうだったよ!
その曲の楽譜にはファのシャープって書いてあったよ!!
その音からはじまる曲だよ!!ちゃんと書いてあったんだよ!!」

あゆみちゃんはいつの間にか今にも泣きそうな顔になっていた。雨粒を見てケラケラ笑っていた事が信じられなくなるくらい、初めて見るあゆみちゃんのギリギリの必死な顔だった。

甲高い声でぶちまけるあゆみちゃんに先生はすっかり呆れた様子でため息をつくと、
「・・・・・イチカワさん、この音は違うのよ。ファのシャープじゃないの。ちゃんとよく聴いて答えなさい」
と言った。

それでもあゆみちゃんは「ファのシャープだ」という主張を曲げず、音階当てクイズは先生とあゆみちゃんの押し問答で頓挫してしまい、気がつくと時計の長針は7の数字まで抹殺していた。
結局、先生が実際にあゆみちゃんに手元を見せて弾き、その音が確かにファのシャープではない事を確認したあゆみちゃんだったが、「でも・・・でも・・・」と何か言いたげにもそもそ言いながら遂に泣き出してしまうという衝撃的な展開でリズム教室は幕を閉じた。
あゆみちゃんが泣いたのを見た最初で最後だった。
その日は1階の教室にまだ何やら言い合っている二人を残したまま、地蔵になった生徒達と私はそろそろと階段や2階のピアノの部屋に退散した。
私は平素を装って、いつものように階段の6段目で本を読んでいたがあゆみちゃんはいつになってもドアから飛び出して来ず、遂にピアノの時間になってしまった。彼女とはピアノのレッスンが別クラスだったし、終了時間も違う為、その日はそれ以降会えなかった。
本当なら、互いにどちらかが終わるまで待っている事もあったのだが。
無論その日はピアノのレッスンが終わって、1階に戻ってもあゆみちゃんの姿はなかった。
本はちっとも面白くなかった。

・・・・・・・・。
次の週からあゆみちゃんは教室に来なくなった。本当に来なくなってしまった。
翌週は単純に欠席かと思った。珍しい事だったけれど、誰も何も言わなかったし、ちょうどその頃ピアノのレッスンに新しく加えられた教本が難しくて(というかやる気がまったく起きないくらい魅力を感じなかった教書。なんだったかは忘れた)ピアノの講師に伸び悩みを咎められる事を予想して気が重かったから、そんなに気にはしなかった。

ただ、あの日みたいに本が面白くなかっただけだ。

翌々週も、その次の週も、ずっとずっとあゆみちゃんは現れなかった。
そのうちに夏休みに入った頃だったか、
あゆみちゃんがとっくにその教室を辞めたと聞いた。


絨毯敷きの階段の6段目に座って、高い天井にまで届いている玄関のスリガラスから射す駆け出した夏の陽を見つめていた。
真っ白い壁や天井いっぱいに乱反射して、息の詰まる様な白い夏の昼下がり。
生徒達のはしゃぐ声や、模範な女子生徒の弾くツェルニーの20番、玄関のドアに吊り下げられた小さな風鈴の音、絨毯敷きの階段を小走りであがるピアノ講師の鈍い足音、
フィルターを経た様に聞こえる。壁の向こうで聞こえる様に。まるで他人の事の様に。


私は「ウォーリーを探せ」を開く。一人でページを開く。
人気のある本だから、順番を待ったり、誰かと一緒に読まなくていい今日はラッキーなのだ。。

あゆみちゃんもこの本がとてもお気に入りで、何度も何度も二人で読んだもんから、
私の目前にやはりウォーリーはすぐに出現してしまい、すぐに全ページに於いて目的を失ってしまった。

15分という時間が経つのは思いのほか遅く、私は1階のロビーの受付の上にかかっている鳩時計をちらちら睨みながら、ページの上で視線を彷徨わせていた。
時計の長針はなかなかピアノ教室の開始を示す45分のところ、9を貫いてはくれなかった。

ウォーリーを捜索するという目的を達成してしまった私は仕方なく以前あゆみちゃんがケラケラと笑いながら示した様に「面白い絵や人間」を発掘してみようと思った。
何百人という人々のイラストはひとつひとつが違っていて、何度も読んだ筈なのに一度も見たことの無い人間が何人も出現した。
「一粒で二度おいしい」というキャンディーやチョコレートはよくあるが、この本は「一冊で何度でも面白い」という感じなのかもしれない。

たったひとつしかない絶対的な「目的」を持ち、知らず知らずのうちにそれに拘束されてしまい一人で黙りむ事しかできなかった私、、。
対照的に連続する幾多の瞬間の中で次々と目的を「発見」し、たくさんの周囲とそれを共有し笑う事を好んだ彼女、。
あゆみちゃんは自発的に本なんて滅多に読まないみたいだったけどこの本だけはお気に入りだった。
少し納得できる気がする。

一人では見つける事ができなかった、そうしようとも思わなかった名も無い「面白人間達」を次々に発見しながら、私はふふふと笑った。一人で笑った。
でも隣に彼女が居た時の様にケラケラと甲高い笑い声をあげる事はもうなかった。


いつだったか飾りのレースのリボンが全部とれてしまった白いスカートには新しい飾りのリボンが縫い付けられて、薄汚れた生地も綺麗に漂白されていた。


名も無い面白人間達を一人ひとり噛みしめる様に見つめながら、一人で「ふふ・・・」と小さく笑いながら、
私は真新しく縫い付けられたレースの飾りのリボンをひとつひとつむしっていった。
きっとまた母に叱られるのであろう。
そしたら「スカートはもういいの。スパッツが履きたいの」と私は言うだろう。


たったひとつきりの、赤と白のボーダーの様な単調な自分だけの世界から、
名前も知らないたくさんの人々の輪の中で転げまわりたいと思ったのだ。

もう一度ケラケラと甲高い声で腹の底から笑うあの感情を味わってみたかったのだ。


あゆみちゃんがこの腕を引っ張ってくれなくとも、なんとなくそれが出来る気がした。
真っ白に飛んでいく、7歳の夏の始まりだった。
色鮮やかに飛び出した、幼い私の微々たる革命、
新たな始まりだったのかもしれない。

Posted by 芙美子 on 5月 7, 2008 |

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コメント

告知に衝撃!


革命前夜のお気持ちは 如何に?


これからも、サヨナラから始めましょう (^-^)v。

投稿 TOTO(ゲルベ14) | 2008/05/16 6:52:38

小さなころの経験が少しずつ大人の階段を昇っていく感じがする・・。
これかも頑張って下さい。

投稿 ほのぼの | 2008/05/14 21:13:03

そうだ水玉!がんばろう!!

俺も原稿がんばるよ!!!

投稿 lgt | 2008/05/12 0:48:30

N.Y. steakさんとふみ姉のやりとりにちょっとググっときた。
こうやって見守っている人がいて、自分の現在地が見えていれば、憂いはなし。
一歩一歩足元を確かめつつ歩いていけばいいと思う。
本業(だよね(笑))のほうも出演情報など気長に待ってるよ。

投稿 kk | 2008/05/09 4:21:31

やっぱり、幼い頃に、一人一人、人それぞれの、文中のあゆみちゃんの様な自分には無い価値観を持った人との、衝撃的な出逢いってあるものなのですね。

幸運にもあゆみちゃんの様な人との出逢いが僕の人生にもありました。

その彼とは今でも、スケジュールを調整し、たまに会っては食事をしたり、お酒を飲んだりと楽しく穏やかな時間を共に過ごし、時にはこんな僕に悩みを打ち明けてくれたりします。

当たり前のようだけど、それはとても幸せなことだと心から思っています。

出逢った時、その彼が持っていた価値観は、幼い僕にとってはまるで得体の知れない宇宙人のようで、彼のブラックホールのような底無しの魅力に僕はあっという間に飲み込まれていった。

この記事を読み終えた時、ふと考えた。

その彼にとって、僕との出逢いは衝撃的なものだったのだろうかと。

その彼が持っていたブラックホールの様な魅力が僕にもあったのだろうかと。

でも僕がどれだけ考えたところで、その答えは彼にしかわからない。

ただ一つだけ言えることは66億の人々が暮らす広大な地球上で、その彼と出逢えたことは、僕にとっては光り輝くキセキであり、とても幸せな出逢いだったと、心から言える。

投稿 rain。 | 2008/05/09 2:23:33

うーむ、これまでって普通のブログだったかなぁ
…って、コメントに反応してどうなる(爆

投稿 ふぁん | 2008/05/09 2:03:06

N.Ysteakさん→ありがとうございます。なぜかはわからないけどとても嬉しいコメントでした。たくさん年月がかかっても、自分なりの描き方を見つけていきます。


また普通にブログが書けるまで少しかかりますが、近いうちに再開します。

投稿 水田芙美子 | 2008/05/09 1:27:26

微々たる革命の記憶か…
私には微々たる挫折の記憶なら山ほどあるんだけどなぁ…

頂上を登り詰めるには、一段一段階段を登るように進まなくてはいけない。
これがベスの目指す頂上への第一歩というのなら、私は支持する。
7歳のベスが感じた、肌で感じた夏の蒸し暑さが私の脳内肌にも再現されたから…
今は頂上を目指すというその意志を失わないことのほうが大事だと思うから…

投稿 さる太郎 改め 三重太郎 | 2008/05/08 19:45:14

六つ子(ウソウソ三つ子×倍)の魂百までもっていうけれど
七つの子の魂に響いた創造性の拡張。
八つの頭
九本の尾っぽ(革命はNO.9までってのもあり)
なんてのを備える前に
あゆみちゃんに出会えて
それは運命の邂逅だったんだと思います。

自分にとっては、はるおみくんとさつきちゃん
ってところでしょうかね。

それはさておき、
今回特に感じたのはリズムセクションの充実でしょうか。

メロディメーカーとしては既に折り紙をつけて飛ばしても大丈夫なんでしょうけど

しっかりとしたリズムキープに
アタックの強いビート感覚。
やはり話がしっかり流れてくれて
長い文書なのにサラサラ読めます。

私的には
ドラムス=坂口安吾
ベース=開高健
ピアノ=本谷有希子
ギター=川上未映子
ってなリズムセクションが最近の自分の文体。

はてさて、水田さんのリズムセクションは
どんな感じなんでしょうね?

何かひとつ建設するたび
何かひとつは壊したくなる
それが創る道だから
あせらず刻んで刻んでどうぞ。

投稿 かに座 | 2008/05/07 22:45:18

(-_-)y-~~
それなりに期待して読み始めたけど、
特に感想はないな。

コメントの内容は、
fumikoお姉さんが何を目指しているのかによっても変わってくる。
本気で芥川賞をとるんだというつもりなら、
こんなありふれたことを書いてちゃダメだな。

投稿 N.Y. steak | 2008/05/07 21:49:49

長所を見る先生と短所しか見ない先生。子供のころにいい先生に当たることは、すばらしいことなんですがね。それでその小の一生がきまることもある。
ところで、この写真クリックしたらでっかくなって驚きました。床かと思ったら鏡のような天井で写しているベスの姿が!いいですね!

投稿 好きだ好きだすき焼きだ好きだ好きだすき焼きだ | 2008/05/07 7:22:16

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