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2008/04/27

G線上のアリアさんになんて贅沢は言わん。あたしは電線上のスズメに過ぎないのだもの。



あっくんのベースの話をしよう。
冥王星の海底2万マイルから。
えへ。やっぱね、何も産めないのは相変わらず。
そりゃあもう大変な難産なんだからさ、でもね、今日は何も産まないって先に宣言して、こうして書いてる。

皆様ごめんなさい。


少しずつ、色々勉強中だけど、少しずつまた元の調子に戻しますね(笑)

ああ、でもまだまた暫く潜るつもりだけれども、
なんかまだエラの方の調子が良くないみたいだから、たまたまこうして息継ぎに浮いてきたって訳。

そう、


あっくんはね、ベース弾きなの。あっくんが何処の何方かってのは敢えて説明せんでおくけども、
あっくんはね、「くっ」っていう一拍分にすら、命が煮えたぎっているベース弾きでね、

ライブ見たのね、あっくんがベース弾いているステージ。あっくんは脇役な訳。

上手いんだよ、凄く。でもね、
私あっくんの手首の事しか殆ど覚えていない。

ベースと指がテンポ良く戯れて、乱れない速弾き。
それで、キメの一拍。その後の一拍分の空白。
その時にあっくんの手首がリアの下あたりまで「くっ」って落ちて止まる訳。

まるでストップモーションみたいな静寂を携えている。爆音の中で。一拍の「くっ」っていう動作がね、

その動作は勿論一拍分の他愛もない、手癖みたいなもんよ。
でもね、その一拍分の無造作の中に、誰も、まだだあれも気がつかないあっくんが居る訳。

それやもう、ああもう素晴らしく成立しているのね、、、だから何って感じでしょ。
でも、「だから何っ?」っちゅう意味のない動作に感化されるって、感化させるって言うのは、エライ事よ。

あすこには何か居る。居る。在る。
だってそうじゃなければこんなにぐらぐらしないもの。

あの一拍のあっくんの手首にはきっと爆音の全曲を無音にするような爆弾が仕掛けられているに違いないのさ。
でも、やっぱりだあれも気いつきゃしない。

なんか、なんかこういうツマラン意味の無い一拍の中に、
まるで、そうね、朝焼けの橙色に滲む積もりたての雪面、だあれも踏んでいないそこに投身するような快感さをとても感じたって訳で。
そういう何と言うか感というか、ナントカカントカみたいなよくわからない「ふっ」っていう鼓動を大切に想っちまう訳だ。
私は。

あっくんの手首の「くっ」っていう一拍の中に、否めぬ鼓動の盛り上がり。
あの一瞬の中で見た、眩しい程に成立したあっくんのリーズンデートル。。。。些細なモノではあるけれど。
微細にでも存在している確かな引力によって、否めぬ墜落の予感。
あの一瞬の中で発生した、可笑しい程に不揃いの、この妙ちくりんな「生感帯」みたいな感覚。


また「好き」になれて良かったって、思った。何かを。

愛する余力がまだあった事や、それをまだ探せる感覚がまだ残ってた事は気恥ずかしいが嬉しい事だった訳だ。

そういう訳であたしはあっくんの手首にエラくどエラく感謝した訳だ。

・・・・。

そうそう、それからね、なんだかとても「無意味」ブームなんだけど、

終電の私鉄を待ちながら、線路を見つめるんだな。
危ない事想像してると思うじゃろうけど、残念ながら現実世界では、そこまでヒロインにはなれんのだな。
阿呆くさいので却下。夢なんて所詮は見るだけ、蛇の生殺しさ。
ありゃあ、無いんだ。浮世には。だからアコはアコ自身が創るんだって思ってた。

世界に勝手に絶望しながら、アコはアコ自身に手前勝手な希望を思ってた。


それは想像と言う名の創造だ。世界は諦めてもいい。でもアコはアコの中の世界だけは諦めたくない。
そしてそこでは想像が創造として成立し、カタチになる、唯一の場所。

只の戯びだったのだよ、戯びはあなたもお好きでしょうよ。ねえ?アコはね、絶対そう思うの。
みんな戯びたくても、我慢して凝縮されながらゆさゆさ電車で還っていくけど、アコは違う。
アコは今、戯びたい。アコは、意味なんていらない。得なんて要らない。
衝動だけが一番透明な信条であって一番素直な心情って、思ってる。想いたい。
電車は定刻で勝手に止まっちまうけど、アコも本当は止めてほしいのかもしれないけれど、
でも、既にブレーキがなかった。
ブレーキが。
それに何かに制御されるのはきっと苦しい。轢かれるよりも。
だから、戦慄きながらアコは戯ぶのを辞められずに居た。極めて愉しそうに。


ああ、あれは確か急行列車の地響きに唸っちょる線路の上に垂直に横になっとる身体を想像するっちゅう地味で趣味の悪い戯びをしていたんだった。

終電車がわんわん鳴って待ちぼうけ不貞腐れてくれてんのにも関わらず、どうにかしようにもどうにもこうにも
戯ぶのは辞められないんだった。

帰りたくないようとやんや言ってる駄々っ子みたいに、「ごめんごめんもっかいもっかいだけ」って、
どうにもこうにも戯びが終わらない。

想像なんかは、どう構築して、綺麗に綺麗に整えても、所詮現実や目前ではカタチを持つ事が出来ずに、意味を持たないと解っていた。
駄々をこねても子供ではないアコはよおく知っていたんだけれども。

そうこうしているうちに遂に終電車は発射しちまった。
しびれを切らして、目を赤く染めながら発車しちまった。

何にも来ないのに、もう何にも居ないのにその戯びをするのは、まるで一人でオセロしているみたいな孤独感だ。

仕方が無いわねっつう顔をお試しでコンパクトの小さな鏡に映せば、無表情のままの白い顔面が渇いた舌を出していたもんだから、

そのまま駅から歩いてヘルメット300個分くらいの場所にある酒場に行くことにした。

バーテンの兄ちゃん、ズックは相変わらず金髪でおっ立ってて、闇夜に咲く向日葵みたいな奴だった。

「アコね、お金を持っていないから代わりに面白い戯びを教えてあげる」と言ったら、案の定気前よくウオッカを出してくれた。
禁じられたあのお戯びの話をしてやった。

そしたらズックはゲラゲラ笑いだした。金髪をガシガシ掻き毟りながら。
ゲラゲラとガシガシとが止まらなくなったみたいだった。

笑いすぎて過呼吸になって苦しいっちゅってんのにも関わらず、まだ性懲りもなく狭い床の上をころげまわるもんだから、
ビアサーバーのクチんとこにでも中てといたらって、アコが空っぽのナイスフォローしたら本当にやりやがったんだ、ズックの野郎。

女が焼餅妬くんじゃないかっつうくらいのえげつない接吻を、金色の唇にだ。

今度はアコの方が参っちゃって、狼狽しちまう程笑いが止まらない。笑いが止まらない!!笑うしかない。

これは大問題だ。干しっぱなしのワンピースとスリッパが乾いているかどうかっつう最重要問題を易々抜いての大問題。
アコはカウンター奥の丸い形の窓を見た。

そこからは十六夜の青い光が射していて、ふらふらの酔っ払いみたいなゲンナリさ加減でデコボコのカウンターに
ぶっ倒れている。

アコは着けたて、磨きたてのスカルプの爪の先をそうっとその青にひっかけた。
青のふらふらの光の膜をにじって、細く編んでから、

未だにゲラゲラ笑ながらえげつない接吻を続けるズックの首に引っ掛けた。

きゅうと両端をちょっとずつ引っ張る。絞られて滴る群青の雫。
「そろそろ洒落にならんでしょう?」ってアコが言う、
ズックは「ならんならん!!」っと言ってから、
「愛してる!!」とぶちまけて、笑いながら群青まみれの首から下で、ウオッカごとアコを抱いた。


夜明け前


アコは私鉄の始発電車を待っていた。
線路の上で待っていた。


寝ぼけ眼のように弱々しい吐息みたいな朝焼け。一秒一秒を噛みしめるように世界に染み込んでいく。
熟睡した無垢な子供の様に静かな寝息をたてる、ズックの金髪は萎れた向日葵になっていく。


群青まみれに濡れたままのアコと眠っているズック。


アコはね、アコは、世界の何処にも夢なんかないって知っているの。
だからアコは想像するの。
でも今朝はとっても気分がいい。

だってズックが「愛してる!!」って言ったのよ、アコに。
群青に濡れながら思ったの。青い接吻を信じたい気がしたの。

笑いが止まらない。ダイナマイト300個分くらいの衝動なの。

アコは目を閉じる。


想像の中の衝動を、想像の中だけだった戯びを、
想像の中だけでしか触れた事のない愛。

そしてたった一夜に青く創造された愛のカタチ。


ズックは「愛してる」ってアコに言った。
アコは青い色が大好き。

きっとあの禁じられた戯びを今なら此処で創造できる。
でも、今でなきゃたぶん駄目。白昼にはこのカタチが埋もれて溶けて無くなっちゃうから。


今でなくちゃ。
今でなくちゃ。
今でしか見つけられないんだから。


ねえ?ズック。あなたも戯びはお好きでしょう?


ーーーー・・・・走り去る始発電車。散って飛ぶふたつの群青・・・・。。。。

同じ頃、ズックのアパートには女が寝ていた。赤い唇の女が、黒髪の男と。

その女は想像にも創造にも興味がなかった。
その女は目前にあるカタチ達だけを、只、認めることができた。
その女はすぐ脇で寝息をたてる黒髪の男の肩に額を寄せながら、幸福そうに眠っていた。

女はうわ言のように呟いた。


「バイバイ。ズック」

世界を諦めたままで覚めない夢の中、
世界を赦せないままで醒めない心のまま、
禁じられた想像を、一瞬の衝動のみに託して創造してしまった、アコ。


アコは何を恐れていたのか。
アコは何を守りたかったのか。
たった一瞬の儚い想像の出現にまでかけて。


女は幸福そうに眠っている。
気温があがる。
今日もその先が陽に照らされていく。


女は幸福そうに眠っている。

確かなカタチを持つ黒髪の男の体温に抱かれながら。


アコが知ることのなかった血の通ったカタチを抱きながら。

Posted by 芙美子 on 4月 27, 2008 | | コメント (11) | トラックバック (3)